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​犬アトピー性皮膚炎:急性期の治療 ①

アレルゲンの同定と回避
CADの急性悪化の原因となるアレルゲンは,近年曝露が増加した環境アレルゲン(特にハウスダストマイト,花粉), 食物成分の経皮曝露,およびノミや他の刺咬性昆虫などです.

通常, 犬がこれらの異なる複数のアレルゲンに過敏である場合に限って発現し,アレルゲン負荷が悪化を誘発するのに十分に高い場合に限って発症します.

感作アレルゲンの同定のためにはアレルゲン特異的 IgE検査の実施が役立ちます. この検査の最終目的は, 同定された感作アレルゲンの情報にもとづいて減感作薬を作成する事にあるという認識も必要で, それによって検査結果を最大限に活用することができます.

CADの急性悪化要因と原因となっている可能性のあるアレルゲンを知ることで,以下のような回避対策の立案,指導が可能となります. CADを悪化させる因子として,ブドウ球菌やマラセチア以外にも,空気中のアレルゲン(ハウスダストマイト,花粉,カビ胞子)そして食物,節足動物全般のアレルゲンがあるのでこれらの回避順位を高く位置づけます.
 

  • 花粉とカビが高濃度に存在する時には,屋外へ出る機会を減らします.

  • 花粉の飛散量は1日を通して朝方に最も多い傾向があります.空気中のアレルゲンに関する情報はインターネット上で広く検索が可能となっています.また,風が強い日は抗原曝露量が増加します.

  • ハウスダストマイトの感作が確認された場合には,ダニ抗原を通さない特別な高密度繊維で出来ている枕カバーやマットレスカバーを利用することが推奨されます.

  • 犬用ベッドとしては,洗濯可能なベッド(中はポリスチレンビーズを使用)を購入することを推奨します.少なくとも2週間ごとに洗濯を行い,2年ごとに交換します.

  • 直接的アレルゲンとの接触回避-例えば,草類に対するアレルギーがある場合(特に草類あるいは犬が濡れている場合)は草類に触れさせないようにします.お散歩時のボディースーツの着用なども効果的です.

  • ドライワイプ(下記)や入浴を行うことも効果的です.抗原との接触直後であれば,それはまだ被毛に付着しています.乾いた吸着布を使ってそのアレルゲンを取り除けば,皮膚からの侵入を最小限にすることができます.この理論を実践するため,1日最低2回から機会毎に全身の被毛にドライワイプをかけることを指導することで,抗原回避に加え家族とのコミュニケーション強化にも役立ちます.

  • 入浴は, 皮膚に優しい薬用シャンプーを利用すれば,1週間から10日間隔で実施でき,かつ優しくアレルゲンを取り除くことが可能です.薬用成分が皮膚に作用するためには最低5-10分間は洗い流さずに置くことが必要です.

  • 外用のダニ駆除薬,節足動物成長阻害薬および乾燥剤はハウスダストマイトをコントロールする上で重要となりますが,死骸や糞は直接的な抗原となるため,掃き掃除,拭き掃除を頻繁に行うことも重要です.

CADの腹部急性悪化病変

ドライワイプのお奨め-​

ドライワイプとは、吸塵性・多孔性の不織布(クイックルワイパーの布など)で動物の被毛を乾拭きすることです.

メリットとして

  1. 犬でも猫でも毎日、機会毎にできる。(シャンプーは犬でも毎日できないし、猫ではほとんどできません)

  2. 環境抗原と皮膚の接触機会を減らすことができる。(被毛に付着した環境抗原が皮膚に到達する前に除去することができます)

  3. シャンプーのように被毛に付いた抗原を皮膚に流すことがない。(洗浄の仕方が不十分だと抗原が皮膚に付着したままになります)

  4. 不織布は洗って乾かせば何回か使えて経済的である。(使い捨て用の布は安価で購入可能で、数回再利用が可能です)

  5. 動物が嫌がることなく、オーナーとのコミュニケーション手段となる。(毎日の習慣にすることで、病変の観察にも役立ちます)

  6. 適切なシャンプー療法と併行することができる。 (適切なシャンプー療法を選択し、その併用がより効果的です)

 

CADと診断した子の環境抗原対策として指導するようにしてから、一定の効果を得ています。効果を定量化することができず残念ですが、治療の感触は良いのでお試しください.

ドライワイプのすすめ
​ドライワイプ中の犬
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