top of page

残念なお知らせ

こちらに掲載されている減感作療法につきましては、

2023年の時点で国内では新規治療開始が不可能となりました。

採用していた検査系が使用できなくなったことが理由です。

大変残念なことではありますが、

他の新しい治療薬で痒みのコントロールが可能​となっておりますので、

そちらをご参照ください。

尚、現在治療中の減感作療法は継続が可能であり

学術知識として貴重な情報も含まれていますので

​記載内容についてはこのまま残すことといたします。

​包括的な根治療法

減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法:ASIT)

減感作療法は,免疫応答異常の長期的改善のために最良の選択肢とされ,他の全治療オプションと併用可能とされている包括的な治療法です. 減感作療法はアレルゲン特異的免疫療法(ASIT)とも呼ばれ,一定量の原因となる抗原を次第に増量させながら注射していく方法です. 1997年のWHO見解書によれば,人の医療分野において減感作療法は,自然治癒を促す唯一の治療法と位置づけられています.  獣医療分野においても欧米では通年性ADの長期療法として最善の方法と認識されています.  最終的に他の抗炎症治療の必要性を減らし,症状を部分もしくは完全寛解に導くことができる点でのメリットは他の治療では得られないものです.

 

使用アレルゲンの種類や,投与量は国際的に標準化されていませんが,複数の報告と臨床経験の中で,独自のプロトコールや急速減感作療法が紹介されています. 個体ごとに複数のアレルゲン特異的IgEの存在が確認でき,そのアレルゲンとの接触回避による臨床症状の軽減が得られない場合,家族が時間的,費用的に受け入れることができれば,減感作療法は最も合理的で,長期にわたるステロイドに依存しない治療法となります.

急速法/舌下法

急速減感作療法は導入期を短期間で済ませてしまう方法です。通常は1日おきに通院し,20日間かかる行程を入院して1時間おきに1日で終了するなどのプロトコールが考案され,欧米では通常の方法と同様の効果が報告されています. 日本においても急速減感作療法を行った15症例について,ご家族の感想を交えた下記内容の発表が行われ,通常の減感作と同等以上の実績を残しています.

(牛草貴博,中村孝行,野田正志,土屋和弘「急速減感作療法を行った15症例について -飼い主様の感想を交えて-」第30回動物臨床医学会年次大会プロシーディングNo.3:5 – 8,2009.)

  • 1歳-7歳までのAD犬15症例を対象に 急速減感作療法を行った。

  • 維持期での臨床症状が 50%以上改善した症例は12/15(80%)だった。

  • 維持期でのご家族の満足度が得られた割合も同等であった。

  • 導入後平均2ヵ月で改善が見られた。

  • 全症例で急速法に起因する重篤な副作用は認められなかった。

 

舌下を介して投与するASIT(舌下免疫療法:SLIT)も安全でアトピー犬の治療に有効であるとする複数のエビデンスが挙げられています.  ハウスダストマイトに過敏なアトピー犬における小規模なSLIT(舌下免疫療法)に関するオープン・パイロット・スタディでは,ほとんどの犬における,臨床的改善とダニ特異的IgGとIgEの変化が報告されています.  同様に,ハウスダストマイトと花粉に対して過敏症を示す犬に対するSLITの大規模な回顧的研究では評価された犬の約60%で良好から優秀なSLITへの反応があり,以前の皮下ASITに失敗していた症例の半数にSLITへの反応が得られたことが報告されています. 

 

皮下注射法によるアレルゲン特異的免疫療法も, 日本国内における有効性や安全性は良好ですが, 犬に毎回注射を打つことに消極的なご家族に対しては, アレルゲン投与法を舌下に置き換えることも提案できるようになりました. 舌下免疫療法は獣医学領域においては,かなり新しいものですが, これまでのところ良好な成果を示しています. 特に顔面の症状には効果も早く顕著に得られる傾向があります. 順法的かつ合目的に入手可能な獣医師の個人輸入による, 混合アレルゲン液を用いて, 個体ごとにその評価を行うことが成功への最短ルートです.

舌下免疫療法前の左耳
治療開始6週後の左耳
ASITの作用メカニズム

ハウスダストマイト単一抗原による減感作への注意喚起

ハウスダストマイトはCADにおける主要アレルゲンですが, 皮下注射によるアレルゲン特異的免疫療法において,複数のアレルゲンに感作されている犬へのハウスダストマイト単一抗原の注射は生理食塩水の注射と同等の効果しかみとめらないことが,ランダム化2重盲検プラセボコントロール試験というエビデンスレベルの高い研究によって実証されています.

Willemse T, Bardagi M, Carlotti DN, et.al. Dermatophagoides farinae-specific immunotherapy in atopic dogs with hypersensitivity to multiple allergens: A randomised, double blind, placebo-controlled study. Vet J. 180:337-342, 2009.

この研究では,コナヒョウヒダニに限定した治療液とプラセボ(生理食塩水)は痒みおよび皮膚症状の両方において同等(P<0.05)の効果でした.

コナヒョウヒダニに加えて環境アレルゲンに対する過敏症のAD犬において,コナヒョウヒダニだけに限定した免疫療法はこの疾患をコントロールするには不十分であることが示されているので注意喚起を促したいと思います.

ハウスダストマイト単一抗原による減感作
bottom of page