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猫の過敏性皮膚炎  アトピー性症候群(Feline Atopic Synderome :FAS)の診断基準

猫の過敏性皮膚炎の症状としては以下のものが挙げられ、約46%の症例で複数の症状が見られます.

  • 顔や首のすり傷・痒み

  • 粟粒性皮膚炎

  • 自傷性(対称性)脱毛

  • 好酸球性皮膚炎

顔や首のすり傷・痒みの場合、殆どが自傷性で強い痒みを呈するのが特徴です.基礎疾患として, 内分泌疾患, 耳炎, 糸状菌, ウイルス感染(ヘルペス、カリシ、パピローマ、ポックス、FeLV)などがあるため, ステロイドを安易に使用してはなりません.  診断に際しては必ずこれらを除外していく必要があります.

自傷性脱毛の場合は体幹部に対称的に見られることが多く, 他の疾病を除外することで判断します. この点では犬と同様です. 特徴としては体幹部におこりやすく, 過剰なグルーミングが原因となりやすい点があります. ただし, 猫の家族はどの程度が「過剰な」グルーミングであるか気がつかないことが多いです.

好酸球性皮膚炎の場合は二次感染を伴うことがあります. 上記の症状の他にも, 四肢の皮膚炎, 脂漏性反応, 表皮剥奪性皮膚炎, 顔面紅斑, 皮疹の無い痒み, 耳垢性耳炎などがあがる場合もあります.

 

FASと診断するにあたって最初に様々な感染症(寄生虫疾患, 糸状菌, 二次感染, ノミ)をルールアウトすべきです. その上で, 問診に基づいて除去食試験を6〜10週間実施し,さらに曝露試験を行って判別します. それでも症状が残る場合, 環境抗原に対する「血清アレルゲン特異的IgE検査」を行い, ASITを実施することを検討します. 「皮内反応検査」は犬と比べて反応が良くないためにあまり行われません.

 

ASITの効果が好ましくない場合に次の対処として,対症療法として抗ヒスタミン剤, 必須脂肪酸,ステロイド(プレドニゾロン 0.5〜2mg/kg SID),シクロスポリン(7mg/kg SID)を選択します. 

ノミ過敏症を除外した上でのFASの診断基準

  1. 2カ所以上の感染部位

  2. 初発部位に痒みが見られること

  3. 以下の4つのうち、2つ以上の症状が見られること

    • 対称性脱毛

    • 粟粒性皮膚炎

    • 好酸球性皮膚炎

    • 顔や首の糜爛・潰瘍

  4. 皮膚病変の中で粟粒性皮膚炎が最も多く見られること

  5. 頭部、顔、口唇、耳、顔に好酸球性皮膚炎、対称性の脱毛または糜爛・潰瘍が見られること

  6. 臀部・尾部、後肢に非対称性の脱毛が見られること

  7. 腹部に対称性の脱毛が見られること

  8. 前肢に糜爛・潰瘍が見られること

  9. 胸部や腋下に病変が見られないこと

  10. 腫瘤・結節が見られないこと

これら10項目のうち, 6つを満たした場合の感度:90%, 特異度:83%となります.

ただしそれでも完璧ではないので、注意が必要です.

また, 蚊による皮膚反応にも除外しなければなりません.

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